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「ポトスライムの舟」津村記久子
「ポトスライムの舟」津村記久子_c0045523_111286.jpgナガセは工場のラインで働き、六時からは友人のカフェでアルバイトをし、土曜日には商工会で老人にパソコンを教える。



ナガセは新卒で入った会社で、
上司の凄まじいモラルハラスメントを受け辞め、
その後働くことに恐怖を憶え暫く働けなかった。
だから働くことを止めることが怖くなっていた。また働けなくなるのではないかと。

世界一周旅行のポスターに目が止まる。

“百六十三万円”

それはナガセの年収にほぼ値する額だった。

生きるために働いている、見慣れた風景の範囲以内で。
ナガセは母と二人暮らす古い家を直そうと、お金を貯めてはいるが、
もっと節約し163万円貯め世界一周に行こうと決心する。
そんな時、友人が子供を連れナガセの家で居候を始める。
離婚したいという。友人は生活のため子供のため無心に働く。
考える余裕などない友人と、世界一周旅を考えるナガセ。

≪時間を売って得た金で、食べ物や電気やガスなどのエネルギーを細々と買い、なんとか生き長らえているという自分の生の頼りなさに、それを続けなければいけないということに。≫

≪工場でのすべての時間を、世界一周という行為に換金することもできる≫

ナガセは、使ったお金を交通費いくら食事にいくらとメモし、いつもお金のことを考え貯める。
そして…通帳の残高は163万円を超えた。

ラストの清々しさに泣けた。いや泣きはしないがじーんときた。
それはナガセにまったく共感したからだ。私と同じ。
ものすごくお金のことを考えている、常に。
で、たまに考える、どっか海外にでも一年ぐらい行くのもいいかも、こんなさえない生活から
簡単にカッコイイ感じになれる気がして。

目標を達成できたらスカッとして、お祝いをしようと思う。
それがちっちゃなことなんだよ、ちょっと何か買うとか。
その時の感情、わかるわかる。すごーくわかる。
すーっと胸が軽くなるんだよね。
それでまた地味に働いて…その繰り返しだよ。
年収と世界一周旅行と同じ金額で、その対比と時間と生活と周りの人たちを描いている
ところが良かったし、ナガセはきっと以前の会社で相当きつい仕打ちを受けたと思うけど、
そこは一切書いていないそこも良かった。

二編目の「十二月の窓辺」は、主人公が入社したばかりの会社で、同僚から浮き、
上司から罵倒され、退職願をいつも持っているという話、この主人公の姿が会社員時代の
ナガセなのかもしれない。

この本を読んでから、今までまったく気にしていなかった「世界一周」のポスターが
やけに目に止まるようになった。そこに何かがあるような…そんな気にさせる。
世界一周99万円!



ポトスライム買いました、いい色です。「ポトスライムの舟」津村記久子_c0045523_10584276.jpg
by nonki27 | 2010-06-07 10:55 | よむ
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