フトミ(仁美)は、7歳のとき美流間に引っ越してくる。
同じ社宅のチーホ(千穂)、病院の息子ムリョ(無量)、 父子家庭のテンちゃん(心太)の4人は 仲良しでいつも一緒に遊んでいた。 チーホは眠ることが好き。 ムリョは食べることが好き。 テンちゃんは、人に好かれ人気者で、特別のオーラを放っているような人。 小学生によくあるような、勉強ができる、スポーツができるから人から好感を持たれる、 というようなことではない。テンちゃんの魅力って?なぜそうさせるのか、 何か秘密があるのではないか。 フトミもテンちゃんに特別の何かを感じている。 ≪人の関心を引くための努力など、心太には似合いません。彼は、ただそこにいるだけで、人の気を引くから価値がある筈です。≫ この4人を中心に小学校から高校までの成長物語なのだが、まずフトミの死亡記事から始る。 フトミが何歳でどう死んでいったかからそこから物語がスタート。 チーホの死亡記事、ムリョの死亡記事…と、間に死亡記事が挟まれ、4人の成長物語が進んでいく。 となるとテンちゃんは?と気になってしかたがない。 ネタバレになってしまうけど、多分テンちゃんはフトミの目の前で死んだんじゃないかと思う。 フトミは生涯独身だったようだし、うーんその人の死まで記しているところがなんとも切ない。 フトミとテンちゃんはどうなるのか、結ばれるか、そこで物語を終え後は読者に投げかける のではなく、その人の最期まで知らせるというのは、何とも胸に沁みる。 読後、また初めに戻りたくなる。 ≪その得体の知れないものの愛弟子になるであろうことを予見したのは、仁美が、わずか七歳の時でした。≫ 物語の終わりと、テンちゃんの死亡記事と、フトミの死亡記事がつながっていく。 ≪ 「私ねえ、欲望に忠実なの。愛弟子と言ってもいいね」 「じゃあ、おれは兄弟子に当たる訳だな」 「テンちゃんの欲望はどんな欲望?」 「それは内緒だら、でも、フトミの欲望は、おれが、ずっとずっと守ってやるよ」≫ この感じ、この質感、この温度、この匂い、なんと言葉で表現したらいいのか、 わかる人のはわかるこれが、山田詠美なんだけど。 読後味わうこの味わいは、読書でなければ味わうことができない。 他の何かでは絶対味わえないこれぞ「読書!」なのだ。 もしかしてこれこそ「学問」かもしれない。
by nonki27
| 2010-09-01 09:34
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