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「この世は二人組ではできあがらない」山崎ナオコーラ
「この世は二人組ではできあがらない」山崎ナオコーラ_c0045523_104258.jpg≪社会とは一体なんであろうか。≫で、始まる。
そこで心がぐっと捉まれる、社会とこの世と二人組みとは。



紙川さんは同じサークルの先輩だ。
でも、1978年の同い年、でも、早生まれだから一つ年上になる。
紙川さんは大学卒業後、就職しないで家に居て、親に怒られ家出してたまプラーザに住んでいる。

私は気の強い女で、自分の納得できる行動しか取らない。
他人に同調するような人間ではない。
就職は決まっていたが、研修中に入社を辞めた。私は小さい頃から小説家になりたかった。
紙川さんにに告白され、一緒にたまプラーザで暮らすようになる。
私は、忙しいアルバイトをしながら小説を書く。
紙川さんは塾の講師のアルバイトをしているが、公務員を目指し猛勉強をする。

紙川さんは、「才能がある」と、小説を書くことをとても応援してくれるが、生活と心が少しづつ
離れていく。私は紙川さんの家を出て、埼玉の家に帰る。
紙川さんは、私を養いたい、小説を書かせてあげると言っていた。
しかし、紙川さんは、公務員試験の勉強に力を入れバイトを減らし、一人の生活になると金銭面で苦しくなる。私は、毎月5万円を貸すと約束する。

≪私はこれから、もっと経済力が付くだろう。男の金で小説を書いたりなんてしない。自分で生活をコントロールしてやるのだ。≫

自分自身、男と女、年上年下、社会におけるこの関係。
私も紙川さんも、その中で悩み苦しみ自分の立ち位置を模索している。

この小説の舞台は小さなアパートだ。
自分というもの、二人の繋がり、仕事をし生活していく…一人と自分以外の近くの一人と社会との関わり、それらすべてのことがこの物語にある。

ある年齢になると、二人組みになることに必死になる。
だけど、この世の最小単位は二人組ではない。‘ひとり’だ。

≪好きだ、という科白をひとりの異性にしか使ってはいけないという社会通念を、私はばかにしていた。どうして全員が二人組みにならなくてはならないのか、なぜ三人組みや五人組がいないのか、不思議だった。≫

悠長に話ができる人、頭の回転がよく答えられる人、人当たりがいい人、そういう人は就職活するのにも有利なのかと思ってしまう。別に面接が下手でも、人に信頼され、コミュニケーションをとることが上手い人もいる。

≪もしも仕事中に泣いたら駄目なのだとしたら、上手く喋れる人だけで社会が成り立ってしまう。しどろもどろで喋る人が抜群のアイディアを持っていることもあるというのに、それは切り捨てるのか。≫

この物語は、ナオコーラちゃんの私小説だと思われる。
小説に対しての強い気持ちが伝わる。
気持ちが吹っ切れたのか、物語の終盤で「紙川さん」が「紙川」になるところが
潔くってよかった。

紙川さんも、シオちゃんのことが嫌いになったわけではなく、自分の社会に対する位置を模索していたのかも知れない。
by nonki27 | 2011-09-28 10:02 | よむ
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