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「オリンピックの身代金」奥田英朗
「オリンピックの身代金」奥田英朗 _c0045523_105284.jpg東京オリンピック間近、東京で爆破事件が起きる。
東京オリンピックを妨害する犯人の狙いは?




須田忠の父は、警視庁のオリンピック最高警備の幕僚長。
兄は、大蔵省で官で固めた上級の家、須田はテレビ局に入った次男坊。
須田の千駄ヶ谷家で火事が起きる。いや、それは爆破事件だった。

島崎国男は、秋田出身の東大大学院生で、出稼ぎの兄の死をきっかけに、
人夫としてオリンピックの現場で働く。須田とは東大の同級生。

落合昌夫は、警視庁で爆破事件の担当刑事の一人。
千葉の団地に引越し、10月10日が子供の出産予定日。

良子は、島崎の行きつけの北郷にある古本屋の娘。
神田の会社で事務員をしている。ビートルズのファンだ。

昭和39年8月22日の章から始まり、昭和39年10月11日の章が最終章となっている。
各章では、須田、島崎、落合…の語りで書かれていて、日付は進むだけでなく、
各人ごとに前後する。
だから、この場面で出会った2人は実はこんな理由でと、後から分かる筋立てになっている。

島崎は、兄がどんな仕事をしていたか、オリンピックの手伝いになればと、夏休みの間、
現場で働くことに。それは想像を絶する肉体労働。
兄はこの日々をどうやって耐えたのか、出稼ぎ人生の中何を思っていたのか。
オリンピックで沸く東京と違い、古里秋田は貧困、労働者は底辺にいる。
本当の兄の死の理由は…島崎の胸に湧き上がる怒りは押さえが利かず、
スリの村田と意気投合してからは、どんどんとんでもない方向に。

戦後最大のイベント、国家の名誉と警察の威信にかけて、オリンピックは成功させなければならない。
しかし、その陰には…。

≪おらはこの二十年、なんの目標もなく生きできだ。
…もうちょっと生きでる証拠が欲しぐでな。そんなとき、あんちゃんが現れた。
それはもう眩しかっだ。国を相手にダイナマイトを爆破させで、まったく動じねえ。オリンピックを人質に身代金まで要求する。こういうのは悪じゃねえ。反逆だっぺ。≫

そりゃあ、スリも悪い、爆破も悪いだけど…
島崎とスリの村田、二人には逃げて逃げてどこまでも逃げ切って欲しかった。
by nonki27 | 2010-12-17 10:03 | よむ
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