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「家日和」奥田英朗
「家日和」奥田英朗_c0045523_17113053.jpg帯には〝いい人は家にいる〟<在宅>小説。
これを読んだだけで心が躍る。お・も・し・ろ・そー!





「サニーデイ」
42歳の主婦紀子。子供が二人いるが、下の子供が中学に入ってから
家族で出かけることなど無くなった。ネットオークションでピクニックテーブルを出品してからオークションにハマッていく。等々夫の大事なモノにまで手を出す。

「ここが青山」
36歳の裕輔、14年間勤めた会社が倒産した。明日から妻は働きに出るという。
自然と裕輔が家事をすることになる。朝食を作り、子供を幼稚園に送り、掃除をする。
新しい仕事の家事は以外にも楽しいものだった。料理の腕前は進歩し家族に喜ばれる。

「家においでよ」
38歳の正春、妻が家を出て行って一人暮らしが始まった。
妻が選んだものは全て持ち去られた。がらーんとした部屋。
カーテン、カーペットから始まり自分好みの家具を買う。
好きな本やCDに囲まれた生活ができる喜び、高額のオーディオ機器も買ってしまう。
「男の隠れ家」となり友人が通ってくる。

「グレープフルーツ・モンスター」
38歳の弘子は専業主婦で、DM用の宛名入力の内職をしている。
営業マンが週に一度仕事を持ってきて、フロッピーを回収していく。
その営業マンが29歳の若い男に代わった。
柑橘系の匂いを漂わせやってくる。

「夫とカーテン」
34歳の春代はイラストレーター。夫が会社を辞めてカーテン屋を始めると言い出した。
行動が早いもう、辞表は出し根回しをしていた。新築マンションがバンバン建っていく、
そこが狙い目だと・・・

「妻と玄米御飯」
42歳の康夫は小説家。名のある文学賞を獲り、ベストセラーを出し信じられない金額が
振り込まれた。妻は仕事を辞める。そして・・妻が熱中し始めたものは〝ロハス〟。
食卓には無農薬野菜が並び、玄米御飯が現れ、肉は出てこないので子供達は不満。

紀子がどんどんオークションにハマッていく心情は、ホントにリアルだ。
オークションは評価がある。感謝されると嬉しい。気持ちが高揚していく
素晴らしいことだと感じる。皺まで消えた気になる。ちょっとした心の張りで女は変わるこ
とが出来る。
そこと、ほろっとさせる夫と子供の言葉と、夫の大事なものに手を出した妻の滑稽さが
いいバランスで上手い!と膝を叩いてしまう。
世間は失業中の裕輔に、夫の失業を機に働き始めた妻に同情の目を向け、慰め励ましの言葉をかける。でもこの夫婦は、あれれ?と戸惑う。
世間にどう思われようと上手くいっているんですよ。「人間到る処青山あり」です。


面白かった~康夫の〝ロハス〟の話。
妻がロハスにハマッていったのは、近所に住む佐野夫妻に影響されたわけ。
<全体的に女性雑誌的な〝おしゃれ感〟が漂っていた。だから康夫には〝かゆい〟のである。>
そうそうわかるわかる!エコロジーの話は正しいけどさ・・・
いかにもって感じで。絵に描いたような風貌で、自然自然といいながら、おしゃれなんですよ。
締め切りが迫っているが、康夫はアイディアが浮かばない。
佐野夫婦とロハス・・・なら書ける。
腹の中にあるものをぶちまけたいと思うのだが、それはまずいだろうと・・・・
中学受験に≪ロハスなら歩いて行ける公立だろう。矛盾していないか?結局、女は今だけのイメージで生きているご都合主義なのだ≫「そうだ、おっしゃる通り。書け、書いておしまい」と私は呟いていた。

康夫はユーモア小説家。この人奥田さんだよなぁ・・・
≪ユーモア小説だから裁いたりはしない。フェアネスも忘れない。自分の目から見た、少々滑稽な人々を描写したいだけなのだ。≫
奥田さんの小説に対する姿勢が表れていました。
≪ユーモア小説は醒めた視線がないと書けない。リアリストでないと、人の滑稽さはわからない。もっとも、文学的要素があるわけでないので、執筆にはいつも苦労する。≫


この小説は家庭内の話だ。だけど・・・、家族で助け合うとか、夫婦で支え合うとか、
そんな家族の話ではなく、あくまでも紀子の春代の康夫の、ひとりひとりの話だ。
一人の人間を離れた所からみている。家の中の目線じゃない。
康夫の言う「醒めた視線」かもしれない。不思議と家族的な感じはしないのだ。
これは家族小説ではないよな・・・と考えうーんなんだろう。
帯の後ろに〝家庭発信 6つのドラマ〟と、そうかぁ家庭発信ってことか・・・?
迂闊だった。奥田さんファンとして恥かしい。
今までの奥田さんの短編読んでいるのだからさぁ、考えるまでもない。
伊良部の所に来る人、会社で働く中年サラリーマン、OL
みんなその人のことを描いている。今回はたまたま、家にいる人だった。
奥田さんの視点は変わりなく、その人の滑稽さを、その人を温かく認めて描いている。
〝いい人は家にいる〟家にいる人なのにどうしてこんなに面白いのだろう。
ブラボー <在宅>小説。
by nonki27 | 2007-04-14 17:30 | よむ
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