陸田真志は、殺人を犯し拘置所での生活で現実から逃れようと本を読んだ。片っ端から多くの本を読んだが、自分の心を満たすものとは出会えずにいた。新聞に載っていた池田晶子さんの短文を読み、「何か」わかったように感じ、池田晶子さんの本を読み自分を知り、罪を認めることができた。
編集部に送られてきた、陸田真志の手紙を読み嬉しいと思い、 ひとつの仕事を成すため協同作業をしようと「死刑囚」と「哲学者」の獄中往復書簡が始まる。 陸田真志一通目の手紙、陸田真志二通目の手紙・・・と読み進め この人はこんなにも池田さんの考えを理解し、これほどの文章を書き 凄いなぁと思い読んでいったが、そのうちだんだんと嫌な気になっていった。 なぜかいい気はしない、何だかこの人、調子に乗ってきたなぁと・・ どこがどうとは言えないが、こちら側(読者)が微妙に感じるもの。 すると、池田さんはビシッといいます。「回を重ねるにつれ、少しずつレベルが落ちてきた」 それは、人にどう読まれるか気になり出した、と。 こういう本は、上からものを言っている、押し付けがましいと感じたりすることがよくあるが、池田さんの本を何冊か読んでもそういうことは感じられない。 何故か?≪私にとって最高の読者とは、真理を受けとめてくれる相手としての「神」であり、あるいは、より賢明である(だろう)数千年後の人類です。歴史上の偉人や哲人である場合もあります。文章を書くこと「いいほうに意識する」とは、つまりこういうことです。そして、そうやって書かれた言葉が、結果、同時代に同じ思いでいるどこかの「その人」に、届くことになるのです。≫ こういうことだった。相手に対しての意識が大きい。 また読み進めていくと、この人は後から自分のしたことを反省しているのだけれど (遅いということ)これだけの考えを出来る人がなぜ?人を殺したのか。 金欲しさの計画的な犯行だと言うが、どうして殺人までしたのか。 そこを書いて欲しいと思ったら、 池田さんが「なぜ人は人を殺すのか、生な言葉で聞いてみたい。この仕事が出来るのは現在あなたしかいない」と書く。この往復書簡の流れで進んでいくやり取りが、こちらの(読者の)読み進め考えていく過程と一致して惹き込まれていく。 人には必ず死は訪れる。誰でも死ぬのだけれど「死」と「死刑」は違う。 逃げも隠れも出来ない「死刑囚」の生の言葉は特殊で貴重なのかも知れない。 ≪「なぜ」存在するのか、「なぜ」それをしたのか、という問いは、じつは必ず一歩、遅れています。だから「とにかくまず」語り出してみること≫ 言葉にすると遅れている。本能のまま、生の言葉とはどんな言葉なんだろう。 難しいな、「なぜ」の問いは考える時点で遅れ、言葉にすることでまた遅れる・・.難しい。 ≪できることができることになるのは、できないことができることになる「瞬間」があるからです。観念が行為になる瞬間です。人はそのことを、意識せずに日々飛び越えているけれど、本当はここには、恐るべき深淵があるのです。≫ ここにも隠れた〝時〟があった。意識なんてしていない考えてもないことだった。 その〝瞬間〟とは何だろう・・・ と、今まで考えもしなかったことに、気づかされ自分なりに考える本なのです。
by nonki27
| 2007-08-25 16:20
| よむ
|
のりのり27 のん気に行こう
ライフログ
カテゴリ
全体日々 野球 よむ みる はな 美技 めん タグ
東野圭吾(50)
伊坂幸太郎(33) 奥田英朗(18) 穂村弘(18) 山崎ナオコーラ(17) 真保裕一(14) 瀬尾まいこ(12) 角田光代(10) 小川洋子(9) 池田晶子(9) 森見登美彦(9) 森達也(9) 桐野夏生(8) さくらももこ(8) 津村記久子(7) 三浦しをん(7) 新選組(7) 山田詠美(6) 横山秀夫(6) 鷺沢萠(6) 嶽本野ばら(6) 垣根涼介(6) 宮部みゆき(5) 東直子(5) 吉田修一(5) 絲山秋子(4) 百田尚樹(4) 野球(4) 西村賢太(4) 長嶋有(4) 川上未映子(3) 原宏一(3) 三崎亜記(3) 群ようこ(3) 増田明美(3) 山本文緒(3) 恒川光太郎(2) 久坂部羊(2) 桜庭一樹(2) 町田康(2) 古田敦也(2) 天童荒太(2) 原田宗典(2) 佐藤多佳子(2) くらもちふさこ(2) 島本理生(2) 中村文則(2) 夏目漱石(2) 道尾秀介(2) 乃南アサ(2) 白岩玄(2) 松本人志(2) 宮本輝(2) 米山公啓(2) 荻原浩(2) 益田ミリ(2) 湊かなえ(2) 綿矢りさ(2) 木内昇(2) 西川美和(2) 有川浩(2) 林真理子(2) 村上龍(1) 多島斗志之(1) 多和田葉子(1) 太宰治(1) 大道珠貴(1) 池井戸潤(1) 竹山道雄(1) 中島京子(1) 朝井リョウ(1) 朝倉かずみ(1) 長岡弘樹(1) 辻仁成(1) 田村裕(1) 田中慎弥(1) 田辺聖子(1) 藤沢周(1) 白川道(1) 舞城王太郎(1) 以前の記事
2021年 03月2020年 12月 2020年 07月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 04月 2020年 03月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 12月 more... 最新のトラックバック
検索
その他のジャンル
記事ランキング
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ファン申請 |
||